至峰堂画廊にて、Maria BARBAN個展を開催いたします。
本個展は、台北のNeptune Galleryのご協力により実現いたしました。
台北出身のMariaは、古典芸術への憧憬を基底とし、その宗教的な精神性や哲学を、油彩と黒箔、シルクスクリーン技法を用い繊細に表現しています。
今後の活躍が見込まれるMaria BARBANの日本初個展をお楽しみください。
【会期】
10月25日(水)~11月15日(水)
10:00 – 19:00 日曜・祝日休廊
【会場】
至峰堂画廊 銀座店
東京都中央区銀座6-4-7 いらか銀座ビル1・2階
【作家ステイトメント】
北半球の冬の夜空に明るく輝く、もっとも有名な星座の一つであるオリオン座。人体のシルエットを象っているとされるオリオン座は、オリオンの「腹部」を通る、直線状に連なった三つ星からなる「オリオンのベルト」に象徴される。紀元前1050年頃の天体観察記録によると、古代エジプト人はギザのピラミッドの建設にあたり、ナイル川を天の川とし、ピラミッドの方角をオリオンのベルトと揃えたとされている。オリオン座には神々が宿り、天国への入口がオリオンのベルトとされたのだ。
2013年の来日の際、私は六本木の国立新美術館で開催されていた「貴婦人と一角獣展」へ幸運にも足を運ぶことができた。展覧会の目玉は総全長22メートルにも及ぶ壮大なタペストリー6枚。ルネサンス期の最も有名なタペストリーのひとつである「貴婦人と一角獣」の主題によって語られる意味合いははっきりと解明されてはいないが、浮世の愉楽や宮廷文化についての寓話的な表現であるとされている。そのミステリアスさで人々を魅了してやまないこのタペストリーの実物を、元々普通の旅行のつもりで過ごしていた中で目にできたことは僥倖であり、巨大なる実物の発するオーラは、いかなる複製からも得難いものだった。
古典芸術への愛を起点に、古典作品をAI画像生成ツールに読み込み、自ら撮影した写真やインターネット上で見つけた画像などと組み合わせることで、自らの制作の参照となる「複合的な古典作品」を作成した。この取り組みは、古典芸術への敬意を表すると同時に、AI、即ち人工知能の新時代への賛辞でもある。
この度の展覧会の作品には、油絵とシルクスクリーンの技法と併せて、慎重に選ばれた黒箔を用いている。黒箔は銀箔を酸化させて作られている性質上、非常に脆く扱いに注意が必要だ。そしてその特徴として繊細な、磁気を帯びたような紋様や、高貴でなおかつ控えめな神秘性を帯びている。画面にはルネサンス期のタペストリーの背景として用いられる、一面を重なりなく埋め尽くす小さな花や植物の紋様「mille-fleurs」(千花模様)へのオマージュを込めた。作品の根幹や技法は、シンプルでありながら、展覧会の題名に秘められた意味に触れる宗教的な精神性や哲学的な思索を示唆している。
Maria BARBAN