CSR・CSV

ミキモト

Ginza×CSR・CSV Vol.11 ミキモト

ミキモトの社会貢献活動
真珠は海からの贈り物

2014.02.19

今回の「銀座×CSR」は、宝飾品の製造販売を行うミキモトの社会貢献活動についてお聞きしました。毎年冬のシーズンに注目されるのは、銀座本店前に展示される大きなクリスマスツリーのイルミネーション。その基盤には、自然と共に美しい世界をつくっていきたいというミキモトの企業理念がありました。

生きたモミの木を公共施設に寄贈

  • ─ 銀座の冬の風物詩といえば、御社の「ジャンボクリスマスツリー」ですね。
  • 1976年に始めて以来、昨年で36本目となりました。大都会の中で自然に触れてホッとできる場所を提供したいという思いから、銀座本店前の「ミキモトガーデンプラザ」では、年間を通して四季折々の花や植物を展示しています。
    その一環として、冬は毎年イルミネーションで華やかに演出したモミの木を展示しています。
  • ─ モミの木は根付きのまま掘り起こしてくるそうですね。
  • 私たちは、宝飾品を通して豊かな生活文化の創造に貢献したいと考えています。そのため、根を切ったモミの木を使って展示が終わったら捨てるのではなく、自然との共生というメッセージを込めて、根付きのままの生きている木を大切に使うことにこだわりを持っています。ツリーのオーナメントも、木を傷めないように配慮してデザイン、装飾作業をしています。
  • ─ 展示が終わった後のモミの木はどうされているのですか。
  • 展示後のモミの木は、毎年の公共施設に寄贈しています。公募をして、専門家に土壌調査などをしてもらった上で寄贈先を選定しています。
    これまで、東京近郊の養護学校や幼稚園、小学校、養護老人ホームなどに贈りました。銀座本店での展示が終わったモミの木が、次の年のクリスマスにも、子どもたちの手によって再び飾り付けされている写真を見ると、とても嬉しいですね。

「ゼロ・エミッション型の真珠養殖」も

  • ─ その他も、自然環境保全や命のつながりへの思いを込めた取り組みをしていますね。
  • クリスマスシーズンなどには、1993年より毎年チャリティー商品を販売し、売上の一部を自然環境保全のために寄付しています。2012年度の寄付総額は6,972,000円で、公益社団法人国土緑化推進機構を通じて、防災林の森林整備や地域周辺の緑化などの東日本大震災復興事業に役立てられました。

ミキモト クリスマスチャリティー2013のピンブローチ、ボールペン、ネックレス

  • ─ 「ミキモト真珠研究所」では漁場環境の整備に向けた研究もされているそうですが。
  • 「ミキモト真珠研究所」は、1900年初頭に、創業者の御木本孝吉が真円真珠の研究を進めるために開設されました。その後、100年以上に渡り、真珠に関する総合的な研究と生産現場に則した新技術の開発を中心に研究を行っています。

    定期的に養殖漁場や海底、水質などの環境調査も実施しています。アコヤ真珠の母貝となるアコヤガイに付着するゴミなどは、ナマコなどが餌にしているため、本来は自然に浄化されるはずです。その浄化システムの限度を超えた量のアコヤガイを養殖してしまうと、海が汚れてしまいます。海の浄化能力に見合った適正な養殖貝数を保持するように配慮することも研究所の役割です。
  • ─ 研究はどのような事に活かされていますか。
  • 例えば、真珠養殖の過程で、自然界への産業廃棄物の排出を無くす「ゼロ・エミッション型の真珠養殖」を実用化しました。貝殻や貝肉に含まれるカルシウムやタンパク質、コラーゲンなどの有用物質を化粧品や健康食品に活用しています。

    これまで廃棄されていた貝肉も、養殖期間中にアコヤガイに付着する生物と共に堆肥の原料にしています。どうしても塩分の多い堆肥になってしまいますが、脱塩処理をするには大量の水と大規模施設が必要です。小規模な真珠養殖業者では対応できません。ところが、トマトなど、あえて塩分の多い堆肥を与えた方が、塩ストレスによって食味向上が認められる作物があることが分かりました。これも研究の成果です。

    業界全体で取り組める持続的なゼロ・エミッション型の真珠養殖実現に向けて、今後も研究を進めていきたいと思っています。

ミキモト真珠養殖ゼロ・エミッションマップ

創業者の思いを継いで自然との共生を目指す

  • ─ 華やかな宝飾の世界の裏には、地道な研究と自然への思いがあったのですね。
  • 真珠は海からの贈り物です。海とその周りの自然環境がきれいでないと美しい真珠は生まれません。
    美しい自然と共に宝飾文化が広がり、世界が輝くように、私たちは自然との共生を目指して日々取り組んでいます。その思いは、創業者の御木本幸吉が世界で初めての真珠養殖に成功してから、現在に至るまで変わっていません。
    創業当初の明治時代、外国人の多かったこの銀座に店舗を構えたことで、世界中に真珠の存在を知ってもらうことができました。銀座に育てていただいたお陰で今の私たちがあります。

    これからも、東洋随一のハイジュエラーとして、豊かな宝飾文化を広げていきたいです。そして、商品を作って売るだけでなく、どのように社会に貢献していくかを考えていきたいと思っています。

株式会社ミキモト 広報宣伝部 広報宣伝課

坂巻 志保

1985年イギリス・ロンドン生まれ。大学卒業後、2007年に株式会社ミキモトに入社。銀座 本店にて国内外のお客様への営業活動を経て、現職。新聞やテレビ、雑誌社に対する企業広報活動、新商品の記者発表、雑誌やテレビでの撮影用商品の提案・貸出などに加えて、広報企画のセミナーやイベントの運営、協賛企画の実施、ウエブサイトなどの執筆を担当。世界中の人々を真珠で飾るという幸吉(創業者)の夢を追い求め、実現できるよう日々活動している。

インタビュアー/p>

杉山 香林

株式会社オルタナ コンサルタント 外資系IT企業や広告代理店、PR会社で、マーケティング・コミュニケーション、および事業戦略、新規事業開発に従事。2008年に独立、社会的課題解決に向けた啓蒙プロジェクトや、企業とNPOの協働支援、CSR活動のコンサルテイング、実務推進サポートを行っている。

取材・文:杉山香林  企画・編集:株式会社オルタナ

All List