井田 裕二×高嶋 ちさ子

お客様にとって大切な1個を丁寧に作り続ける

高嶋さん

お菓子づくりへのこだわりは？

井田さん

いい材料を使うというのはもちろんなのですが、工場の機械化も進んだ分、“丁寧に作業する”ということを大切にしています。同じレシピのお菓子を作っても、その日の気候などによって風味は変わってきますから。その微妙な調整には細心の注意を払っています。作るほうは1度に100個、200個と作っていても、手にするお客様にとっては大切な1個。そのことを忘れないよう、これからも丁寧なお菓子づくりを徹底していくつもりです。

高嶋さん

昔から変わらないポリシーと、時代の変化に合わせた変化があれば、ぜひ聞かせてください。

井田さん

創業126年になりますし、実はうちは「老舗だからこうしなければいけない」というのがないんですよ。むしろ代が替わるたびに、その時代時代に合わせたお菓子づくりをする自由な空気に溢れています。

高嶋さん

いい環境ですね。

井田さん

はい。そんな中で、2代目は「冨貴寄」を生み出しましたし、芸術的なことに長けていた3代目は「冨貴寄」の缶デザインを自ら描きました。また、私の父である4代目はアメリカの文化が大量に流入してきた戦後世代で、海外にもよく行っていたこともあり、マカダミアナッツをまぶした｢揚げまんじゅう｣を考案しました。

高嶋さん

確かに、和菓子屋さんでマカダミアナッツは斬新ですね。

井田さん

おいしいうちに食べていただきたいので、こちらは店舗販売限定なんです。できたてを食べてみてください。

高嶋さん

（ひと口食べて）んー、ナッツがカリッと香ばしくて、めちゃくちゃおいしい！　私、揚げまんじゅうも、マカダミアナッツも死ぬほど好きなんです。差し入れにもいいですね。

井田さん

そう言っていただけて嬉しいです。

高嶋さん

代々新しいことにチャレンジされているので、5代目にもプレッシャーがかかりますね。

井田さん

そうですね。まだ2年目の新米社長なので、これからどうしていこうかと模索中です。東京オリンピックも控えていますので、日本の良さを海外の方にももっと知ってもらえるように、今ある和菓子を、さらに今の日本らしく洗練させていきたいなと思っています。