GINZA CONNECTIVE (高嶋ちさ子対談シリーズ)

安田 元慶×高嶋 ちさ子

GINZA CONNECTIVE VOL.58

安田 元慶×高嶋 ちさ子

2016.09.06

バイオリニストの高嶋ちさ子さんと、銀座人たちの対談シリーズ。高嶋さんにとって銀座は、仕事でもプライベートでも思い入れのある街。そんな高嶋さんがゲストの方に、銀座のあれこれをディープに聞いていただきます。今回のゲストは、江戸時代創業の老舗仏壇・仏具店「安田松慶堂」の代表取締役、安田元慶さんです。

江戸時代から受け継ぐ独自の“型”を作り続ける

高嶋さん
江戸時代から続くお店とのことですが、まずはその歴史からお聞かせください。
安田さん
創業は1792年(寛政4年)で、第11代将軍・徳川家斉の頃です。初代は、滋賀の近江で仏様を彫る仏師をしていたようですが、江戸幕府に呼ばれて、浄土宗の大本山である増上寺の仕事を任されたことをきっかけに、江戸で商いを始めたと伝えられています。
高嶋さん
日本橋から銀座に移られて、どのくらいになりますか?
安田さん
昭和40年に銀座に店を構えて、52年くらいになりますね。
高嶋さん
安田さんは何代目になるんですか?
安田さん
8代目です。歌がうまいとか、水泳が早いとか、なにか他に才能があれば違う道もあったかもしれませんが(笑)、生まれたときから当たり前のように店を継ぐものだと思っていました。
高嶋さん
親孝行ですね! 主に仏壇・仏具や荘厳仏具を扱ってらっしゃるそうですが、「荘厳仏具」とはなんですか?
安田さん
各寺院で仏像がご安置されている「御厨子」と呼ばれるものや、その下にある須弥壇というものなど、いわゆるご寺院に配置されている仏具が荘厳仏具です。ほとんどすべて木で作られていて、その上に漆を塗り、金箔を押し、飾り金物という金具を手で打って、彫りを入れています。工程ごとに専門の職人もいるんですよ。
高嶋さん
そうなんですね。しかも、元が木だとは知りませんでした。完全に金物だと思っていました。これだけのものが作れたら、家でも家具でもなんでも作れそうですね。
安田さん
はい、うちは宮大工もいますから。実は、神社仏閣の曲線部分など、組み上げ方法が一般住宅建築とは違うため、専門の宮大工でないと作れないんです。また、屋根の形やバランスなどは会社ごとに特徴があり、その図面が我々にとっては“宝”。代々、「安田松慶堂型」と言ってもらえるような独自の形を作り続けています。
寺院荘厳仏具

寺院荘厳仏具

東京都指定の伝統工芸品「東京仏壇」は3代目が発案

高嶋さん
一般向けの仏壇のラインナップに「東京仏壇」という名前のものがありますが、どういうものなんですか?
安田さん
タンスや箱などを作る「江戸指物師」が、仕事の合間に、黒檀や紫檀、桑、屋久杉などを使って作っていた仏壇で、3代目の安田松慶が最初に作り始めたと言い伝えられています。今は、東京都指定の伝統工芸士が手がけ、かつ最後に漆を塗って仕上げることが決まりになっています。東京仏壇と認められた仏壇には、配布されたシリアルナンバーも貼られていますよ。
高嶋さん
東京の人しか買っちゃいけないなんてことはないんですか?
安田さん
誰でも購入できます。
高嶋さん
つまり、ひとつのブランドみたいな位置づけ?
安田さん
そうですね。東京都の伝統工芸品に指定されている、歴史的な仏壇です。
高嶋さん
へぇ、知らないことだらけで興味深いです。
安田さん
ありがとうございます。普段、仏壇屋に行くことはなかなかありませんからね。
東京仏壇

東京仏壇

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