レポート

Report

ラジオアーカイブ

Hello! RADIO CITY:!AMAZING GINZA!No.20つばめグリル~ずっとこれからも美食の街・銀座、だからこの店!

銀座の魅力を紹介する中央エフエム「Hello! RADIO CITY」の「! AMAZING GINZA !」コーナーでは、『ずっとこれからも美食の街・銀座、だからこの店!』シリーズがスタート。第一弾にはつばめグリルの石倉知忠さんが出演し、銀座で商売を営む楽しさと厳しさを語りました。そして誰もが知るあの人気ハンバーグの新しいカタチとはーー。

番組名:Hello! RADIO CITY(中央エフエム 84.0MHz)
放送日時:2020年11月19日(木)12:05~12:20
ナビゲーター:JUMI
出演者:石倉知忠(株式会社つばめ 代表取締役)

専門性の高い商売がつくる、粋な人の街

JUMI
「Hello RADIO CITY」で銀座の名店や個性ある飲食店を応援する企画として、今回の「!AMAZING GINZA!」コーナーから、「ずっとこれからも美食街・銀座、だからこの店!」というシリーズを始めます。初回のAMAZINGなゲストをご紹介します。株式会社つばめ代表取締役社長の石倉知忠さんです。「つばめグリル」の方がみなさんおわかりかもしれませんね。石倉さん、よろしくお願いします。
石倉
つばめグリルの石倉です。よろしくお願いします。
JUMI
つばめグリルと言うとみなさん「ああ!!あのハンバーグ!!」と思われるでしょうね。石倉さんご自身は株式会社つばめの何代目になられますか。創業はいつごろなんでしょうか。
石倉
私で4代目です。曽祖父が1930年に始めたビジネスです。
JUMI
子どものころや学生時代、そして今はお子さんと一緒に家族で食べに行っている方も多いと思います。石倉さんは、日ごろは銀座の街にはいらっしゃるんでしょうか。
石倉
銀座の街ではレストランを2店舗経営させていただいています。銀座には店の状況を見に来るときもありますし、街の方に会う機会もあるので、2日に1回は来ています。
JUMI
銀座のどんなところがお好きですか。
石倉
よく聞かれますが、まずは人ですね。働いている先輩たちに対して「粋」なんて言ったら大変失礼だと思いますが、食やファッションはもちろん、日本の伝統的なものを扱われている方もいます。そういう方はそれぞれの専門分野のなかで本当に知識が豊富です。いろんなことをご存知の方がたくさんいるところが、銀座のとても良いところだと思います。
JUMI
歩く百科事典のような方がたくさんいらっしゃる印象がありますね。

あの人気ハンバーグがおうちでも

JUMI
コロナ禍は第三波と言われているように、感染者の方が増えてきていますね。今後また外出自粛や制限がかかるのかどうか、瀬戸際のところです。こういうなかで、銀座の飲食店はどうなさっているのか、様子を教えていただけますか。
石倉
震災後もそうでしたが、銀座の街はこういう大きなことが起きると特に夜が弱いんです。昼は比較的順調に戻っていて、足を延ばして銀座まで来られている方がいらっしゃるようですが、問題は夜です。なかなか足が遠のいてしまいますね。
JUMI
今の銀座は、夜の街としてのにぎわいは確かにないですね。
石倉
報道などの影響もあって、夜の「繁華街」にはお客様が戻りにくいと感じています。
JUMI
銀座はすべての分野でそうですが、特に食では名店が非常に多いと思うんです。つばめグリルも創業から90年ということで、このコロナ禍で銀座は名店を失うわけにはいかないと思います。だとするとどういう工夫でどう乗り越えていこうかと多くの皆さんが考えていらっしゃるんではないでしょうか。つばめグリルさんではどんな取り組みをなさっているんですか。
石倉
銀座コアの地下1Fにつばめグリルという我々の店があります。コロナの前までは1日だいたい300人くらい、多いと400人くらいのお客様がみえていました。それがどんどん減ってしまいました。一番不安なのは、お客様とのつながりがなくなってしまうことです。お店でお食事を楽しんでいただければ良いのですが、こういう状況ではなかなかむずかしい。つながりをどう続けていくのかを考えて、自粛期間の4、5月にinstagramで料理動画を配信し、なるべくお客様とのつながりを絶やさないようにしていました。
JUMI
つばめグリルの総料理長が、あの人気ハンバーグの作り方を動画で配信なさるんですか⁉
石倉
そうなんです。ハンバーグやトマトのサラダなど、我々の代表的なメニューのレシピと作り方を、一部動画を交えてご案内しています。
JUMI
「まずはおうちで作ってみてください」ということなんですね。
石倉
料理動画などでつばめグリルを思い出していただいて、「つばめグリルってこうだったよね」と忘れないようにしてもらうことが目的ですね。
JUMI
日本全国の方も「銀座においしいお食事を食べに行きたい」、もちろん海外の方も「TOKYO・GINZAのあれを食べたい」があると思うんです。コロナ禍の今、本当に大切にしたいものが途絶えてしまいそうなとき、私達はどうつながっていくか。instagramやFacebook、Youtubeの活用と併せて新しい試みはありますか。
石倉
デジタルのデバイスをこれだけ皆さんがお持ちで、発達もしているので、つながりという部分では良いと思っています。わざわざ食事に来てくださるのは本当にありがたいことなんですけど、いろんな状況でそれが叶わない方もいらっしゃいます。つながりへの取り組みとして、銀座のレストランの中で我々のハンバーグを冷凍して販売(注)する仕組みを作りました。(注:現在はセントラルキッチンにて調理、冷凍後販売。)2021年1月下旬からつばめグリルのWEBサイトで販売していきます。
JUMI
銀座の街には数えきれないほどのおいしい飲食店がありますが、この年末を厳しい状況で迎えられるお店がたくさんあると思います。そのような飲食店はどういう取り組みをしたら良いんでしょうか。動画配信など、SNS以外の方法はありますか。
石倉
文字や写真を見て想像したり思い浮かべたりできることと、実際に経験しないとできないことってありますよね。似ているようですが、実は大きな差があると思うんです。経験は本当に大事なことだなと思います。家では再現できないものとか、一所懸命コックさんたちが作った手の込んだ味とか、そういうものを真面目に売っていくことが重要なのかなと思っています。

「淘汰のレース」から、いかに延命できるか

JUMI
今は「ぜひいらしてください」とはなかなか言えない状況ですよね。それでも「そろそろ家呑みとかオンライン飲み会にも飽きたな」と思っています。10個の経験ができるとしたら、1つは街で特別な経験をして、残りの9つは家でできることを考える、そしてまた大事な経験を1つ、そのあとの9つは家で過ごす、というように、メリハリのある過ごし方が必要になってくるかもしれません。その1回の経験を、どこでどんなものを誰と食べるのか。銀座の名店ではどんな経験をさせていただけるんでしょうか。
石倉
「銀座の商売はうまくいっているんでしょ」とよく言われます。日本中、そして世界中からもお店を出される方が多いですしね。でも銀座って、飲食の立場からみると商売が簡単な場所ではないと私は思っています。賃料も高いですし、不動産の価値も当然あります。そういう場所で店を運営するのは実はそんなに簡単なことではありません。特徴を持って人の印象に残ることに真面目に取り組まないと、なかなか生き残れないと最近はつくづく思っています。そのなかで商売を続けられている皆さんは、やはり何らかの特徴があったり、お客様が「どうしてもそのお店で経験したい何か」があったり、それは何物にも代え難い、そこに行ってこそ、食べてこそ、店主やスタッフ、コックさんたちと話してこそ、なんだと思います。皆さんが楽しいと思ってくださるそういう体験の場をつくっていかなくてはならないと思います。
JUMI
やはり体感することってとても大事ですね。でもそれが今はできない状態だからこそ、オンラインなどを使って、「あのときにあんな素敵な経験をしたんだけれども…」という思いをお客さんにずっと温めてもらって、「今度出かけられる日が来たら絶対あそこに行こう!」って楽しみにできるような、そういう連鎖ができると良いですね。
石倉
そうですね。私の曾祖父は日露戦争のときに東京に出てきて、1930年に創業しました。第一次世界大戦、第二次世界大戦もあって、そのあとにも世界ではいろいろな動乱がありました。いつの時代もいろんなことがあって、そして私の代でコロナウィルスによる世界的なパンデミックが起きました。「一代のなかで世界的な混乱はあるもの。つまり100年に一度は有事があって、今その時に当たってしまったんだ」、「銀座は来るもの拒まず、去る者追わず」と先輩たちはおっしゃいます。「銀座に店を出しているということは、究極的に言えば「淘汰のレースに参加してしまっている」ということ。いずれは淘汰されるんだ。だから自分で努力して、いかに淘汰されないように延命できるかが、銀座での商売で大事なんだ」とおっしゃる方もいました。ない知恵を絞ってなんとか生き延びて、来月なのか1年後なのかわかりませんが、このパンデミックが収まったあとにどうするのかを考えなくてはなりません。

もとには戻らないから、挑戦がある

JUMI
すべてのお店がそのための工夫と努力を少しずつ、少しずつなさっているんですよね。つばめグリルもあの有名なハンバーグを冷凍販売すると伺いましたが、これは前代未聞だとか?
石倉
いままで考えたこともないですね。instagramも見るのは好きでも積極的に自分たちから発信するのが良いのか悪いのか、どうなのかなと思っていました。でもいろんなことの後押しをされるというか、やっていないことをいろいろ実験してみるなかで人とつながる新しい仕組みができる。そういう意味では今までなかったおもしろさというか、発見があって、「目からうろこ」ってこういうことなんだろうなと思いました。
JUMI
ある部分がリセットされて、ある部分で新しい発見が生まれたりするということですよね。皆さん同じ状況にいるわけですから、お互いに支え合うことが一番大事だと思いますし、さらにそれぞれのお店が少しの工夫で半歩進んだ、という意識が持てたら次に繋がる希望を持てる気がしますね。
石倉
そうですね。でも今までの商売の形には戻らないですね。我々の業種のなかで言われているのは、感染が終息しても売り上げの結果は従来の8割、9割にしか戻らないと予測する意見が多数あります。ということは従来とは違う利益構造を作り、経営として店を成り立たせるためにはどうしたら良いのかを新たに考えて行動する必要があります。もとの形に戻らないのであれば、何らかの新しい試みをしていかなくてはならないと思います。
JUMI
銀座の多くの名店に対して、消費者側、利用する側は何かできることはありますか。どんなことを希望なさいますか。
石倉
可能であればご来店いただきたいと強く思いますが、やはりこの状況では、皆さんそれぞれのお考えがあると思います。「今すぐ来てください」と言うのは難しいですね。これから東京で行われるであろうオリンピック・パラリンピックのためもあって、いろんな街で再開発が進んでおもしろくなってきていると思います。でもやはり銀座という場所で買い物をする、食事をする、歩いて時間を過ごすというのは特別なことだと思っています。収まった暁には銀座にぜひ戻ってきていただきたいと思います。
JUMI
「あの味」や「あの体験」を思い出しながら、コロナ感染拡大が減少に向かってきたらいらしていただけるとありがたいですね。それまでずっとお店にはあり続けてほしいです。
今日は株式会社つばめ代表取締役社長の石倉知忠さんにいらしていただきました。石倉さん、ありがとうございました。
石倉
どうもありがとうございました。

出演者プロフィール

JUMI

2010年から中央エフエムにてナビゲーター、プロデューサーとして番組制作等に携わる。
知れば知るほど奥深く、沢山の「宝物」を有する中央区の魅力を「ヒト・モノ・コト・オト」を軸として、多くのリスナーの方々にラジオを通してお伝えしたいと活動する日々。
街と人と橋と地下鉄をこよなく愛しています。

石倉知忠

慶應義塾大学法学部卒業後、サッポロビール株式会社に入社。1998年、株式会社つばめに入社。営業企画部副部長、部長、営業部長を経て、創業90周年の2020年に代表取締役に就任。2016~2018年には(一社)銀座インフォメーションマネジメント代表理事も務めた。
https://www.tsubame-grill.co.jp/

協力:中央エフエム株式会社(http://fm840.jp/

リンクをシェアする

All List