街を歩く人々を魅了する「SEIKO HOUSE」
外観に施された6つのレリーフの意味とは?
案内人:セイコーグループ株式会社 広報部 主査 眞田伸子様
- 櫻井さん
- 銀座といえば、やっぱり4丁目の交差点にあるSEIKO HOUSEさんが思い浮かびます。時計塔は銀座のシンボルマークですよね。
- 眞田さん
- ありがとうございます。現在の建物は、旧服部時計店(現セイコーグループ株式会社)本社ビルの二代目で、1932年(昭和7年)に建てられたのですが、ゆるい弧を描く優雅な曲面を描いているのが特徴で、ネオ・ルネッサンス様式と呼ばれています。
- 櫻井さん
- たしかに、外国の建築のような雰囲気がありますね。
- 眞田さん
- 実はこの建物には、6つの装飾レリーフが施されているんですよ。1階の正面入り口の上をご覧になってみてください。向かって左から、貴金属を表すカップ、Hマーク、商業の神・ヘルメスに関わる紋章、砂時計、転鏡儀(はかり)がデザインされています。
- 櫻井さん
- ほんとだ! こんなに間近で観察したことがなかったので、はじめて知りました。それぞれ意味があるんですか?
- 眞田さん
- Hマークは、当時の服部時計店の商号です。カップ、砂時計、転鏡儀は、当時取り扱っていた商品を象徴しています。
また、杖に2匹のヘビが絡みついている紋章は「カドゥケウス」と呼ばれ、ギリシャ神話に登場する商業の神・ヘルメスが持つ杖です。平和のシンボルともされています。
- 櫻井さん
- なるほど!「SEIKO HOUSE」さんの歴史や象徴が詰まったデザインなんですね。銀座にお越しの際は、ぜひ外観の細かい装飾まで注目してみてください!
銀座の街を彩る、ウインドウディスプレイに込められた想い
- 櫻井さん
- 私自身、美術館が大好きなので、お休みの日はよく上野に行って、アート鑑賞を楽しんでいるんです。SEIKO HOUSEさんのウインドウディスプレイも、まるで街の中の小さな美術館というイメージなので、銀座を歩くたびに楽しみにしています。
- 眞田さん
- ありがとうございます。現在のように季節や年中行事に合わせたディスプレイが展開されるようになったのは、服部時計店の営業部門を継承して設立した和光がこの地で営業を開始した1952年(昭和27年)からです。おかげさまで、多くの方々に親しんでいただいています。
年に10回ほど展示内容が変わるのですが、動きのある仕掛けを使用したディスプレイをしたり、時にはライブイベントも開催したりしています」直近では2月に、チョークアートによるライブペインティグを行いました。
- 櫻井さん
- えっ、そんなイベントも!? ただ眺めるだけじゃなく、実際に職人技を間近で見られる機会があるなんて、すごく貴重ですね!
- 眞田さん
- そうなんです。SEIKO HOUSEのウインドウディスプレイは、 “銀座を訪れるすべての人をおもてなしすること” に、こだわり続けています。お買い物をされる方だけでなく、銀座を歩くすべての人が「ここを通るたびにワクワクする」と感じていただけるように。ウインドウの前で足を止めた方が、少しでも心が躍るような、そんな空間をつくることを目指しています。
知る人ぞ知る、クラシカルな窓は必見!
- 櫻井さん
- 実は、SEIKO HOUSEさんの建物の中に入るのは初めてなんです!
- 眞田さん
- ぜひ、階段室にある大きな窓ご覧になってください。ブロンズで施されたアラベスク(唐草)の繊細な透かし模様の装飾があしらわれています。
- 櫻井さん
- うわーっ!! クラシカルな雰囲気で美しいですね!なんだか中世のヨーロッパにタイムスリップしたような気分になれます。
- 眞田さん
- この大窓も含め、この階段については竣工当時のままの設えで残っております。
- 櫻井さん
- どうりで重厚感があると思いました。この窓から眺める銀座の街も、なんだか特別な景色に見えてきます。こんなに素敵な空間だったとは、想像以上でした!
銀座のランドマーク、時計塔を間近で体験!
- 眞田さん
- 今日は特別に、屋上にある時計塔にもご案内させていただきますね。
- 櫻井さん
- 普段は入れないんですか?
- 眞田さん
- そうなんです。通常は開放されていないスペースでして、たとえば和光でブライダルリングをご購入されたお客さまや、特別なイベントでご招待したお客様におもてなしをしております。
- 櫻井さん
- そんな特別な場所だなんて、緊張しますね……。(時計塔に足を踏み入れると)わぁ……! すごい!! 時計塔をこんな間近で見るのは初めてですが、想像以上の迫力ですね! 遠くから見るのとは全然違います。
- 眞田さん
- そうですよね。近くで見ると、そのディテールの美しさや重厚感がより感じられると思います。
この時計塔が完成したのは1932年(昭和7年)。創業者は「世界にふたつとない時計塔にしたいと考え、時計塔の位置に非常にこだわったと聞いています。時計塔の位置が銀座4丁目交差点寄りに位置していますよね。美しさと共に、銀座の街を歩く人々に時を知らせるという使命を感じていた証拠だと思います。
また、この時計塔には文字盤が4面あり、ほぼ正確に東西南北を向いています。当時は周囲に高い建物がなかったので、有楽町駅のホームからも文字盤が見えていたそうです。スマホも腕時計もなかった時代、人々はこの時計塔を見て、時間を確認していたんでしょう。
- 櫻井さん
- まさに街のインフラの役割を果たしていたんですね。文字盤の細部や建物の装飾がすごく繊細で、建築としても魅力的です。しかも、この場所から銀座の街並みを一望できるのも特別感がありますね。ちなみに、この時計塔の鐘は、どんな仕組みになっているんですか?
- 眞田さん
- もともとは時計塔の天井に付いている鐘を鳴らしていましたが、現在は録音された鐘の音を流しています。1954(昭和29)年から、ウェストミンスターの音階のメロディーが導入されました。学校のチャイムの音ですね。
- 櫻井さん
- そんなに昔から、銀座の街に鐘の音が響いていたんですね……!こうして時計塔が今も変わらず銀座を見守っていることに、歴史の重みを感じます。