CSR・CSV

三越伊勢丹 三越銀座店

Ginza×CSR・CSV Vol.17 三越伊勢丹 三越銀座店

環境と人に優しい店づくり

2014.09.25

「銀座×CSR」第17回で紹介するのは、来年85周年を迎える三越銀座店です。「地域冷暖房システム」の導入や緑化など環境負荷低減を目指した店づくり、日本各地の価値ある文化や芸術を紹介する「ジャパンセンスィズ」、銀座エリアで連携しファッションで銀座の街と日本を元気にする「ギンザファッションウィーク」などの取り組みを進めています。営業計画をご担当する北條司さんに話を伺いました。

店舗面積55%増でもCO2 2.4%減

  • ─ 三越銀座店は2010年9月に増床・改装されました。リニューアルのコンセプトはどのようなものでしたか。
  • 店作りの柱として考えていたのは、来街者の利便性向上に貢献できる公共空間づくり、そして環境負荷の低減です。それまで、エコ包装など環境に配慮した取り組みもしていましたが、ハード面として省エネ、緑化を中心とした店づくりを考えました。
  • ─ どのような点を変えたのでしょうか。
  • まず、照明の電力消費量が大きかったので、店内全ての照明をLEDに切り替えました。また、隣の王子製紙本社ビルの下にある「地域冷暖房システム」を使用しています。「地域冷暖房システム」とは、地域内の商業施設やマンションなどの建物に対して、まとめて冷暖房や給湯を行う仕組みのことです。各建物が個別に冷暖房を行うより、一元的に熱源を供給する方が省エネルギー性が高いというメリットがあります。
  • ─ その結果、CO2排出量はどの程度低減できたのですか。
  • 改装前より店舗面積を55%増やしたのですが、CO2排出量は、改装前よりも約2.4%低減できています。

「銀座テラス」を街の公園に

  • ─ 9階の屋外テラス部分と屋内スペースを合わせた「銀座テラス」はどのような特徴があるのですか。
  • 改装時、「銀座テラス」を街の公園にしたいと考え、銀座の街の一部として活用していただく「公共の場」として位置づけています。外のテラスはもちろん、店内も公共の場として訪れていただけるように授乳やオムツ替えができる部屋も設けました。また、店内での買い物はもちろん、銀座の街でのショッピング時にもご利用いただける託児所もあります。これまでに約2800人にご利用いただきました。
  • ─ 屋外のテラスは緑が豊かですね。
  • 木製のテーブル席やベンチで寛げる9階の「テラスガーデン」の総面積は約1400平米ありますが、その約半分を芝生と四季を彩る植栽などで緑化しお客さまに開放しています。都会に緑を増やすことで、お客さまの憩いの場となるだけでなく、ミツバチの蜜源になるなど、環境が豊かになります。また、テラスの壁面360平米には太陽光パネルを設置しています。その電力で店舗のエレベーター三基分ほどは稼働できています。

緑が広がる銀座テラス

壁面に設置された太陽光パネル

  • ─ 屋外テラスには農園も併設しているそうですね。
  • 屋上農園「テラスファーム」では、京橋築地小学校4年生を招いて、食育や生物多様性の教育もしています。春にローズマリー、ミントなどのハーブの種や、ナス、さつまいもなどの野菜の種を撒いて、収穫まで行います。収穫したハーブの一部は、9階の「みのる食堂」というレストランでご提供しているのですよ。また、生ゴミ処理機を設置してあり、店内から出た生ゴミをリサイクル肥料として活用もしています。
  • ─店内で種から育てて消費、リサイクルするところまでの循環が成り立っているのですね。

テラスの一画に設置されている屋上農園「テラスファーム」

銀座から産地の魅力を発信

  • ─ キャンペーンやイベントなどでも、より良い環境と社会づくりに貢献されていますね。
  • 今年の秋で7回目を迎える「ギンザファッションウィーク」は、2011年よりスタートし、半期ごとに開催しています。「ファッションで銀座の街を、日本を元気にする」というコンセプトで松屋銀座店様とプランタン銀座様の3店で取り組んでいます。
    これまで、繊維や産地など、1つの共通テーマに応じて、それぞれの店舗が独自のMDやイベントを展開し、素材や技術の魅力をアピールしてきました。今では、婦人部門だけにとどまらず、全館をあげて盛り上げています。今後は、さらに各店の独自色を打ち出していく予定です。
    同業者はライバルではありますが、切磋琢磨すると共に、街の活性化のために手を取り合うことが来街者を増やし、ひいては自店の来店者を増やすことにもなるのです。

    また、「JAPAN SENSES(ジャパン センスィズ)」というキャンペーンを三越伊勢丹グループ全店で春と秋を中心に行っています。伝統ある日本各地の優れた技術とクリエイターのコラボレーションを実現することにより、あらためて日本固有の伝統技術や美意識を見つめ直しお客さまに伝えています。

    この秋は、「東北」をテーマに、山形の編みの技術、岩手の南部鉄器やホームスパン(羊毛の厚手な毛織物)、秋田の曲げわっぱなど、東北の産地とファッション・民芸品の魅力を伝えていく予定です。
  • ─ 来年85周年を迎えるそうですね。さらに銀座を魅力的な街にしていくためにはどのような視点が必要でしょうか。
  • 銀座は、古き良き老舗専門店と海外ブランドのフラッグシップ店などの新しい店、劇場やギャラリーなど、日本一の商業集積を誇る街です。海外からの来街者も多いので、特に銀座店では「世界の銀座」を意識した質の高いサービスを心がけています。2010年に増床・改装した際には、2階に外国人観光客向けの案内所兼免税カウンターを設置しました。来年秋には、市中免税店も設ける予定です。

    世界中の方に向けた品揃えと販売サービス、そして環境負荷の低減への取り組みを続けることで、本当の意味でのグローバルな店に近づくのではないかと考えています。また、当店単独ではなく、街との連携・共生を進めていくことが、今まで以上に世界からの来街者を増やすためには必要ではないでしょうか。

三越銀座店 営業計画担当 担当長

北条 司

1982年 株式会社三越入社
2005年 株式会社三越 仙台店 営業第一部部長
2008年~株式会社三越 百貨店事業本部 営業企画担当長
2011年~株式会社三越伊勢丹 基幹店事業部 三越日本橋本店・伊勢丹新宿本店・三越銀座店において営業計画担当長

インタビュアー

杉山 香林

株式会社オルタナ コンサルタント
http://www.alterna.co.jp
外資系IT企業や広告代理店、PR会社で、マーケティング・コミュニケーション、および事業戦略、新規事業開発に従事。2008年に独立、社会的課題解決に向けた啓蒙プロジェクトや、企業とNPOの協働支援、CSR活動のコンサルテイング、実務推進サポートを行っている。

取材・文:杉山香林  企画・編集:株式会社オルタナ

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