CSR・CSV

銀座グランドホテル

Ginza×CSR・CSV Vol.18 銀座グランドホテル

「Shaping the Global Future
地球とともに未来を変えるホテルづくり

2014.10.23

「銀座×CSR」第18回で紹介させていただくのは、グランビスタ ホテル&リゾートの基幹施設である「銀座グランドホテル」です。大規模改装を終え、「地域の価値で、未来を変えていく。」という企業ビジョンのもと、銀座本来の価値を発信するホテルとして2014年5月にグランドオープンしました。今回は、グランビスタグループで取り組む共有価値創造活動「Shaping the Global Future(シェーピング・ザ・グローバル・フューチャー)」について、総支配人の中弥生さんに話を伺いました。

「少し先の未来」見つめ、持続可能な社会目指す

  • ─ グランビスタ ホテル&リゾートでは、歴史あるホテルのほか、全国でさまざまな施設を運営されていますね。
  • シティホテルや、ビジネスホテル、リゾートホテル、総合海洋レジャー施設、ハイウェイレストランなど、全国各地に事業所があります。北海道で初めての本格的洋式ホテルとして誕生した札幌グランドホテルは、今年80周年を迎えます。
  • ─ 80年前の札幌というと、まだ大きな建物がそれほど無かった時代でしょうか。
  • そうですね。そうした中にホテルができるということは、街の風景を変えたり、人の流れを変えたり、初めて英字表記のメニューが登場するといった文化を変えることでもあります。そういったホテルの力を信じて、地域の価値を大切にしながら、グランビスタは「地域一番館づくり」を心がけてきました。
  • ─ 地域の価値を発信し続けてきた歴史が現在の経営理念の柱となっているのですね。
  • 私たちには、「地域の価値で、未来を変えていく。」という企業ビジョンがあります。もちろん、今日明日、お客様にご満足いただけるサービスをご提供することは大事です。しかしながら、同時に、「少し先の未来」が持続可能であるように、私たちの事業を地球規模で考えていきたいと思うのです。「少し先の未来」は、私たちが生きている間かもしれませんし、生きていない時かもしれません。

    そういった思いから、地域やお客様との共有価値創造活動として、「Shaping the Global Future」という取り組みを全社で行っています。「多様な文化の伝承と創造」と「自然との積極的な共生」をテーマに、世の中から共感していただけるような価値を生み出していこうと2014年1月から始めました。

銀座グランドホテル 1Fにはオープンカフェが

  • ─ どのような取り組みをされているのですか。
  • はじめに、北海道札幌近郊で「グランビスタファーム サッポロ」を開園しました。世界で始めて無農薬・無施肥のりんご栽培に成功し、映画にもなった「奇跡のリンゴ」の著者でお馴染みの木村秋則先生の指導の下、一切の農薬や肥料を使用しない農法で野菜の栽培を実践しています。この農場で収穫された野菜は、グループホテルのレストランや、不定期で東京都内のマルシェで提供しています。私たちの事業は、飲食の施設も多いホスピタリティービジネスです。お客様に日々お届けしている「食」に関連する取り組みを一番先に取り入れました。
  • ─ 各施設内ではどのような取り組みをされているのですか。
  • 環境負荷やエネルギー問題について考える機会が作れればと、7月と9月には、「グランビスタ キャンドルナイト」というイベントを各事業所で行いました。7月7日「クールアースデー」では各施設の照明を可能な限り消灯して、ロウソクの灯の中で夜のひと時を過ごしていただきました。また、9月16日「国際オゾン層保護デー」では寄付対象メニューをご注文いただくと、その収益金の一部を森林保全団体「more trees」に寄付させていただくというキャンペーンも同時に行いました。
  • ─ 銀座グランドホテルは、2014年5月に「ホテルコムズ銀座」が大規模改装されて新たに誕生したばかりですね。
  • 当ホテルは、グランビスタの経営理念や運営の考え方が具現化されたホテルとして生まれ変わりました。銀座の価値を発信しながら、自然や持続可能性に配慮したホテルの運営を目指しています。
    例えば、レストランではレインフォレスト・アライアンス認証農園産の豆を使用したコーヒーを提供しています。この選択により、高品質なコーヒーを楽しめるだけでなく、熱帯雨林や野生生物の保護、生産国の農場労働者の生活環境の向上にも貢献することができるのです。
    また、バスアメニティは、「製品の生産プロセスが動物福祉に配慮されている(動物実験を行っていない)」ことと、「環境負担が少なく、生分解性に優れている」ことの2つを選定基準とし、導入を決定しました。私たちは身近なモノから見直すことで自然環境に貢献していきます。

    毎週水曜日には、1階のカフェスペースで「Wednesday Grand Night」という交流会を開催していますので、近隣企業がCSR活動を発表する場などとしてもご活用いただきたいです。

グランビスタファーム サッポロ

バスアメニティ

「それは私たちらしいか?」と問いかける

  • ─ そのように理念を形にする上で心がけていることはありますか。
  • 新しいことをやるかどうかの判断をする時には、常に「続けられるかどうか」を重要視しています。一過性の取り組みで脚光を浴びたとしても真の価値は生まれません。また、逆に本質的な価値があるものなら続いていくのではないかと思っています。
  • ─ スタッフの皆さんにはどのように「Shaping the Global Future」のコンセプトや意義を浸透させているのでしょうか。
  • 宿泊、料飲、人事経理などの管理チームから選んだスタッフで、ブランド浸透プロジェクトチームをつくっています。月1回ブランディングについて話し合う機会を設けて、その中で「Shaping the Global Future」の取り組みについても共通言語で話すようにしています。また、全スタッフを対象にした四半期に一度の集会でも伝えるようにしています。

    やはり、直接お客様に接するスタッフが真に理解していないと意味がありません。スタッフが主導権を持って動かしていってほしいと思い、チームを作りました。
  • ─ 売り上げや日常業務に注力するマネージャーやスタッフの皆さんは視座が異なるので、未来のために意識を統一していくことにご苦労があるのではないですか。
  • 宿泊・レストランマネージャーたちは、マネジメントの上で3つのことに気を配っています。「お客様の満足度」、「売上」、そして「スタッフがどう思っているか」です。スタッフが満足していなければお客様への対応に響き、それがお客様の満足度と売上にも影響します。この3つの点は密接にかかわりあうので、良い循環を作れるかが鍵になります。

    そういった3つの視点に加えて大切なことが「少し先の未来」です。ですが、生まれたてのホテルなので、同時に複数のことを同じだけ進めるよりは、マネジメントの重要な視点に「少し先の未来」のことを徐々に注入しています。スタッフには時間をかけて、両方同じだけ重要だということを落としこんでいきたいと考えています。
  • ─ スタッフへの浸透で重要なポイントは何でしょうか。
  • 私がブレないことです。スタッフに対して、お客様に対して、街に対しての約束をいつも意識するようにしています。
    それから、スタッフの何気ない言動に対して、「それって銀座グランドホテルらしいかしら?」という問いを投げかけています。

    いくら企業理念を美しい冊子にまとめてスタッフに配ったとしても、その理念が日常業務と整合性を持たなければ、生きたものになりません。日常の業務の中、一緒に食事をしている時、バックヤードの中などで、「それは私たちらしいか?」と都度立ち止まって考えてみることが、理念を業務に落としこんでお客様に価値を伝えていくことにつながっていくのではないでしょうか。

    また、そのようにお互い自然に指摘し合える企業風土をつくっていきたいとも思っています。お客様と接しているスタッフこそが引き出しをたくさんもっています。それを引き出すのが私の役割です。

本質的な企業を残す「銀座フィルター」

  • ─ 銀座本来の価値についてどのようにお考えですか。
  • 銀座の街には「銀座フィルター」と呼ばれるものがあるそうですね。銀座には、老舗店舗もありながら、最新のファストファッションブランドもあります。さまざまな商いが存在しますが、銀座で生き残れない企業は、自然と淘汰されてしまう目に見えないフィルターがあるというのです。きっと、銀座フィルターを通して生き残れるのは、本質からブレていない方々ではないでしょうか。一貫して人々の胸に刺さるものがあるからこそ、良いものを見抜ける銀座のお客様に認めていただけるのでしょう。

    私たちも何か一つ誇れるものがなければ淘汰されてしまうかもしれません。その答えは、人々が楽しめるエッセンスを入れながら、「Shaping the Global Future 」の思いに忠実に運営をしていくことだと思っています。

銀座グランドホテル 総支配人

中 弥生

1994年、パークハイアット東京入社。ザ・リッツ・カールトン大阪の開業スタッフ、ザ・ブセナテラスでの勤務を経て、2007年、箱根・翠松園副支配人。09年、ホテルアジール・奈良支配人。13年、グランビスタホテル&リゾート入社。14年5月、銀座グランドホテル総支配人就任。

インタビュアー

杉山 香林

株式会社オルタナ コンサルタント 外資系IT企業や広告代理店、PR会社で、マーケティング・コミュニケーション、および事業戦略、新規事業開発に従事。2008年に独立、社会的課題解決に向けた啓蒙プロジェクトや、企業とNPOの協働支援、CSR活動のコンサルテイング、実務推進サポートを行っている。

取材・文:杉山香林  企画・編集:株式会社オルタナ

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