CSR・CSV

資生堂

Ginza×CSR・CSV Vol.1 資生堂

「化粧のちから」で心晴れやかに
資生堂ライフクオリティービューティーメイキャップ

2013.04.12

最近、CSR(企業の社会的責任)という言葉を聞くようになってきましたが、銀座にも社会の課題解決に取り組む企業がたくさんあります。このコーナーは、そんな「銀座発CSR」をご紹介するシリーズです。1回目は、銀座で創業し、昨年140周年を迎えた資生堂の「資生堂ライフクオリティーメーキャップ」。肌に深い悩みを持つ方のQOL(Quality of Life=生活の質)向上に取り組む青木昭子さんにお話を伺いました。

原爆のケロイドに悩む方を救いたいという思いから

  • ─ 「資生堂ライフクオリティーメーキャップ」とはどのような活動ですか。
  • アザや白斑(はくはん)、やけどや手術跡など、一般的な化粧品では隠し切れないお肌の悩みを持つ方に、肌色の悩みや肌の凸凹をカバーする専用ファンデーションによる施術と、メーキャップのアドバイスを無料でご提供する活動です。これまで3107名(2013年3月末現在)にご利用いただきました。中国(上海・香港)台湾(台北・高雄)でも展開しています。
  • ─ この取り組みを始められたきっかけは何でしょうか。
  • 専門の施術を行う「資生堂ライフクオリティー ビューティーセンター」が開設したのは2006年ですが、お肌に深い悩みを持つ方向けの商品が発売されたのは1957年になります。当時、お客様の中に原爆のケロイドにお悩みの方がいらっしゃいまして、資生堂だからこそできることは何かと考え始めたことがきっかけです。

    現在では長年の研究成果により、カバー力の高さだけでなく、透過する光の色をコントロールする技術で、自然な仕上がりを実現しています。

「医療機関と連携」し患者さんのQOLを上げたい

  • ─ 医療機関とどのように連携していますか
  • 全国8カ所の医療機関を定期的に訪問して、アザや白斑(はくはん)、やけどや手術跡が気になる患者さんにメーキャップを行なっています。
  • ─ お医者さんはこの取り組みについて、どう考えているのでしょうか。
  • 以前は、医療は治療を行うことが主であり、患者さんに施すメーキャップは別物と考えるお医者さんも多かったのですが、治療と共にメーキャップを施すことで、アザや白斑(はくはん)、やけどや手術跡を気にして外出ができなかった患者さんが、外に出て人とのコミュニケーションを楽しめるようになる場合もあるため、治療中にメーキャップを施すことは有用と考えていただけるようになっていきました。

    学会でこの取り組みを発表するなどの地道な活動が実を結び、現在では患者さんのQOL向上につながることが認められています。そして、医療行為とは異なる視点でメーキャップが治療と併用されるようになりました。まさに美容が医療を補完する役割を果たせたのです。

心が立ち直る「化粧のちから」を信じて

  • ─ 施術の際に配慮していることはありますか。
  • お客様が心を開くまでは、余計なことを話しかけないようにしています。センターに来られる方の中には、鏡をまともに見ることができない方もいらっしゃいますから、お肌の悩みについても触れないようにしています。スタッフ同士で日常的に情報交換や勉強会を行なって、技術面だけでなく、より良い接客ができるように心がけています。
  • ─ お客さまはどのような感想を持ちますか。
  • 以前、帽子を目深にかぶり、マスクをされた60代の女性が、旦那さまと一緒にいらっしゃいました。お顔の傷跡をカバーして差し上げると、それを見た旦那さまが「とても奇麗だね、良かった、良かった」と感激されて、奥さまも泣いていらっしゃいました。そして、帽子もマスクもせず、朗らかに銀座の街に出かけていかれたのです。その他にも、足の傷を気にされてパンツしか履けなかった方がスカートを履けるようになったり、写真を一切断っていた方が撮られるようになったり、メーキャップのおかげで心が明るくなって、生活が変わっていく方をたくさん見てきました。本当に「化粧のちから」の素晴らしさを実感しています。
  • ─ 資生堂の「CSR 3つの約束」に「女性・化粧」というテーマがありますが、本活動は、CSRとしてはどのような意義がありますか。
  • 一人一人のお客さまへ真心を込めたこの活動は、まさしく資生堂のコーポレートメッセージ「一瞬も一生も美しく」という社会へのお約束の言葉を行動に変えた取り組みだと思っています。見た目を美しくすることは他社でもできることですが、お肌に悩みを持つ方も持たない方も、一生を通じて心を豊かにすることができるのは、資生堂だけではないでしょうか。商品開発力だけでなく、「化粧のちから」によって、心豊かに過ごせるようサポートしているこの取り組みは、資生堂ならではのCSR活動だと思っています。
  • ─ 今後の課題は何でしょうか。
  • このプログラムの認知度を上げることです。「もっと早く知っていればよかった」というお客様の声を聞くたびに、この取り組みをまだ知らない方に早く伝えなければと思うのです。センターに通えない方も、全国約300カ所の契約店で施術を受けることができるので、それも多くの方に知っていただきたいです。

銀座の街とともに革新を続ける存在でありたい

  • ─ 銀座で創業して昨年140周年を迎えられましたが、銀座の街の魅力をどのようなところに感じていますか
  • 銀座はさまざまな文化の発祥の地です。古来のものを守るだけでなく、革新し続けることが伝統になっている街なのではないでしょうか。そこが、他の街とは同一化しない、銀座ならではの魅力だと思っています。

    施術で奇麗になったお客様が顔を上げて「これから銀ブラしてくるわ」とよくおっしゃるのです。「本物」の魅力がある街だからこそ、奇麗になった自分は銀座にふさわしいと思えるのかもしれませんね。
  • ─ 今後、銀座の街とはどのような関係を結んでいきたいですか。
  • 文化の源である銀座の街に育てられた私たち資生堂も、人々の美しさや健康の源となり、銀座とともに革新を続けていきたいです。銀座では、パーラーの他、企業文化部で長年ギャラリーも運営してまいりました。これからも、化粧品や食、芸術文化支援を通じて、銀座の素晴らしい都市文化に貢献できればと考えています。

資生堂ライフクオリティー ビューティーセンター

青木昭子

ビューティーコンサルタントを経て、首都圏支社で教育や施策、お客さま担当を長年にわたって担当するなど、様々な活動を経験。資生堂ライフクオリティーメーキャプ活動にも初期の段階から参画、東京医科歯科大学で講義も担当する。2008年4月より現職。

インタビュアー

杉山 香林

株式会社オルタナ コンサルタント 外資系IT企業や広告代理店、PR会社で、マーケティング・コミュニケーション、および事業戦略、新規事業開発に従事。
2008年に独立、社会的課題解決に向けた啓蒙プロジェクトや、企業とNPOの協働支援、CSR活動のコンサルテイング、実務推進サポートを行っている。

取材・文: 杉山香林

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