GINZA CONNECTIVE (高嶋ちさ子対談シリーズ)

湯木 俊治×高嶋 ちさ子

GINZA CONNECTIVE VOL.65

湯木 俊治×高嶋 ちさ子

2017.04.03

バイオリニストの高嶋ちさ子さんと、銀座人たちの対談シリーズ。高嶋さんにとって銀座は、仕事でもプライベートでも思い入れのある街。そんな高嶋さんがゲストの方に、銀座のあれこれをディープに聞いていただきます。今回のゲストは、日本を代表する高級料亭「東京𠮷兆」の代表取締役社長 湯木俊治さんです。

「屏風と料理屋は広げると倒れる」の教えを守って、こつこつ励む

高嶋さん
創業者・湯木貞一さんのお孫さんにあたるわけですが、引き継がれている教えなどはありますか?
湯木さん
ふたつあります。ひとつは「屏風と料理屋は広げると倒れる」という言葉。屏風を広げすぎるとパタンと倒れてしまうように、料理屋も手を広げすぎてはいけない。結局、自分の目の届く範囲で商売をし、お客様としっかり相対してこそ長続きするのだと教えられました。まさにその通りで、そう考えると銀座に長く根ざしている名店はどこもそうなんですよね。
もうひとつは、「刻苦光明必盛大也(こっくこうみょうかならずせいだいなり)」という言葉。私はシンプルに、「こつこつ励め」というふうに理解しています。
高嶋さん
耳が痛いです(笑)。でも𠮷兆さんって、やはり一般庶民からすると大きいイメージがあります。名前が偉大というか……。
湯木さん
ご期待が大きいぶん、やはり“こつこつ励むことが大切なのだと思います。お客様が抱いていらっしゃる期待の上に常にいないと、「𠮷兆とあろうものが」というお叱りの言葉を受けますから。それがいちばん油断大敵ですね。
高嶋さん
𠮷兆さんの料理は一番すばらしくて当たり前だと思ってお客さんはいらっしゃいますね。
湯木さん
そうですね。とはいえ、長年やっていると、ひやっとする場面もあります。そのときにどうカバーできるかも、お店の力が試される瞬間です。そのためにも、“目の届く範囲”での商売をこれからも大事にしていきたいですね。
高嶋さん
海外からのセレブリティなどもたくさんいらっしゃるかと思いますが、そのときに出すものはまったく同じですか?
湯木さん
基本的には変えませんが、たとえばワインを召し上がるときには、お造りの醤油とワインはなかなか合いにくいので、岩塩をお出ししたり、バルサミコの醤油をつけたり、といった工夫はしますね。

お客様がお店を育ててくれる、ハレの街・銀座

高嶋さん
創業以来、日本料理を文化として芸術の域まで高めてきた𠮷兆さんですが、東京オリンピックに向けて世界中からの注目が日本に集まる中で、日本料理は今後どのように発展していくと思いますか?
湯木さん
和食は、ユネスコの無形文化遺産に登録されたこともあり、いろんな国で広まっていますよね。その中で、各国の料理人がさまざまなアレンジを加えていくことで、かつて「カリフォルニアロール」が生まれたように、突然変異のユニークな和食が生まれてくるのでは?と期待しています。日本の洋食も、西洋の料理を日本風にアレンジして、ひとつの食文化になりましたし。
そして我々は、海外で生まれた新たな和食の刺激を受けながらも、やはり原点を守っていきたい。日本の豊かな四季の中で、日本らしい料理を楽しんでいただきたいですね。
高嶋さん
これからが楽しみですね。最後に、銀座に対する想いを聞かせてください。
湯木さん
私は大阪生まれで、中学生のときに東京へ来たのですが、そういう人間にとって銀座は“ハイカラの街”であり、“大人の街”。そして、特別な日に訪れたくなる“ハレの街”であると感じています。舌の肥えた方がたくさんいらっしゃいますから、お客様がお店を育ててくださるんですよね。そんな場所でお店を営むことができているのは、本当にありがたいですね。

高嶋 ちさ子

ヴァイオリニスト。6歳からヴァイオリンを始め、海外で活躍後、日本に本拠地を移し、全国各地でコンサートを行っている。現在は、演奏活動を中心としながらも、テレビやラジオ番組の出演などでそのキャラクターが評価され、活動の場はさらに広がりを見せている。

高嶋ちさ子オフィシャルウェブサイト

湯木 俊治

1954年大阪生まれ。慶應義塾大学卒業後、1977年に𠮷兆へ入社。大阪高麗橋本店で、祖父・湯木貞一氏の下で5年間、料理修業に励む。その後、東京𠮷兆 帝国ホテル店での勤務を経て、1988年に西洋銀座店へ。2008年に代表取締役に就任し、現在に至る。プライベートでは、週に1度スポーツクラブで汗を流したり、夫婦で蕎麦屋巡りを楽しんでいる。

取材・文:ヨダ ヒロコ 取材場所:銀座𠮷兆

MUSE〜12 Precious Harmony〜

高嶋ちさ子 12人のヴァイオリニスト ニューアルバム「MUSE〜12 Precious Harmony〜」リリース

高嶋ちさ子 12人のヴァイオリニスト名義で約4年ぶりのアルバム「MUSE〜12 Precious Harmony〜」がリリース。
今作品は結成10周年を記念して12人のヴァイオリニストをメインに、クラシックの名曲を始めとして彩りあふれたアルバムになっています。
オリジナル曲は3曲含まれており、「SPLASH!!!」はスキマスイッチによる作曲・共演と今までにはない楽曲など全12曲収録。

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