熊谷道明×高嶋ちさ子

2013.10.04

ヴァイオリニストの高嶋ちさ子さんと、銀座人たちの対談シリーズ。高嶋さんにとって銀座は、仕事でもプライベートでも思い入れのある街。そんな高嶋さんに、ゲストの方をお迎えして銀座のあれこれをディープに聞いていただきます。今回のゲストは、お香や書画用品、和文具の老舗「鳩居堂」の14代目社長、熊谷道明さんです。

日本の伝統文化を後世に伝えていくことは使命

高嶋さん: ところで、『鳩居堂の日本のしきたり豆知識』という本を出されたそうですね。
熊谷さん: ええ、おかげさまで多くの方に手に取っていただいているようで、うれしいです。
高嶋さん: こういう本は、一家に一冊あると便利ですよね。この歳になっても知らないことってたくさんあるんですよ。
熊谷さん: そうですね。核家族化が進んでいるので、昔は知恵のあるおばあちゃんに当たり前に教えてもらったことを知らないっていう人も多いですから。
高嶋さん: そういえば、子供の頃ヴァイオリンのレッスンを受けていたんですが、月謝制ではなくて都度払いだったんです。なので、その都度母が、鳩居堂さんの封筒にピン札を包んで持たせてくれていましたね。先生の方が「もったいないから封筒はお返しします」なんて言ってくれたり（笑）。
熊谷さん: ありがたいことですね（笑）。
高嶋さん: そういう母の姿を見ていたので、私も自分の子供のレッスン代にはピン札を用意していたんですけど、他のお母さんたちは用意してなくて、「ピン札じゃないと失礼だよ」って言ったら「お金だから一緒だよ」って言われてビックリしたんですね。ほかにも、月謝を払うときに先生にお釣りくれとか言ってる人もいて、今の時代何なの！？って思っちゃって。もう母親教室しなきゃいけないと思うんですよ。
熊谷さん: 我々のアピール不足ですね（笑）。
高嶋さん: もちろん面倒なこともあるんですけど、こういった礼儀というか思いやりの気持ちって大事だと思うんですけどね。
熊谷さん: そうですね。そういうことも含めて、日本人に、日本の伝統文化を後世に伝えていくことは使命だと思っています。

家族で安心して楽しめる銀座を守り続けていきたい

高嶋さん: 銀実会の理事長をされているそうですが、どんなことをなさっているんですか？
熊谷さん: イベントの企画運営や警備やいろいろやっていますね。銀実会の仕事も本業もどちらも疎かにできないですから大変です（笑）。でも私で62代目の理事長になるんですが、これまで先輩方が銀座を日本一の街にするために頑張ってこられた歴史がありますから、一生懸命やらせてもらっています。
高嶋さん: では、これから銀座はどんな街であってほしいですか？
熊谷さん: 老若男女どなたでも、安心して歩いていただける街でありたいですね。そのためにも、銀実会をはじめとするさまざまな組織のメンバーが、活動をしっかりやっていきたいと思いますね。少々大変なことはありますが、だからこそ銀座が他の街とは違う魅力があるんだと思うんです。いつまでも銀ブラを楽しめる街であってほしいですね。
高嶋さん: 最近はファストファッションのお店も増えてきましたが……。
熊谷さん: 残念ながら老舗のお店がなくなったりしているんですが、新しい風が入ってくるのも銀座だと思うんです。ユニクロさんの並びに鳩居堂があるなんて、他では考えられないですよね。
高嶋さん: 銀座って家族で楽しめる街ですよね。うちなんて、現地解散しますから。銀座は街全体が百貨店って感じだから、それぞれで楽しめるのが魅力だと思います。
熊谷さん: それいいですね（笑）。ご家族で安心して楽しめる銀座を守り続けていきたいですね。