GINZA CONNECTIVE (高嶋ちさ子対談シリーズ)

川口 彰久×高嶋 ちさ子

GINZA CONNECTIVE VOL.23

川口 彰久×高嶋 ちさ子

2013.08.06

ヴァイオリニストの高嶋ちさ子さんと、銀座人たちの対談シリーズ。高嶋さんにとって銀座は、仕事でもプライベートでも思い入れのある街。そんな高嶋さんに、ゲストの方をお迎えして銀座のあれこれをディープに聞いていただきます。今回のゲストは、履物と洋傘の老舗、「銀座ぜん屋」の代表取締役 川口彰久さんです。

草履の粋な履き方は、“浅めに指をひっかける”のがポイント

高嶋さん
さすがに、草履に流行はないですよね?
川口さん
いや、ありますよ。ちょっと前には、花緒は幅の太いのが流行っていました。時代時代に合わせて、細くしたり、太くしたり、デザインを変えています。
高嶋さん
へえ、知らなかったです。選び方の豆知識があれば、教えていただけますか?
川口さん
そうですね、品質で選ぶなら、裏の革をチェックするといいですよ。たとえば、裏がクローム革というちゃんとした皮を使っている草履は質のいい草履ですね。
高嶋さん
なるほど!勉強になります。でも、裏が革だと雨の日は滑らないですかね?
川口さん
基本的に、雨の日に草履を履くのはおすすめしません。昔の人は雨の日は、下駄を履いていたんですよ。今は、雨の日用の草履が出ています。それだと、底にゴムがついていて、滑りにくくなっています。
高嶋さん
私は草履って聞くと、ビーチサンダルを思い浮かべちゃうんですが、草履やビーチサンダルのように鼻緒がある履物って履いていると指の付け根が痛くなっちゃいますよね。それってどうにかなるものなんですか?
川口さん
草履や下駄もそうですが、あまり履きなれていない方だと、足の指をぐっと奥まで入れてしまって、指の付け根を痛めてしまうことがありますが、本来、草履や下駄は指先だけちょっと鼻緒に引っかけて履くものなんです。
高嶋さん
だからか! 指が痛くなる人は、奥まで入れすぎてるんだ。
川口さん
そうです。それに、浅く履いた方が粋に見えますよ。だから、ちょっと後ろ目に履いていただくために、わざと前がきつくなっているんです。でも、どうしても奥まで指を入れて履きたいなら、店へ言ってください。そういう方には、痛くならないよう、前をちょっと広げたり、布地を柔らかいものに変えたりしてご対応しています。

銀座で商売をするには、お客様を一番に考える姿勢が何より大事

高嶋さん
銀座ぜん屋さんでは、下駄も扱っているんですか?
川口さん
はい。もともとは下駄屋なんですよ。
高嶋さん
そうなんですね。そもそも下駄と草履ってどういう違いがあるんでしょう?
川口さん
基本的に下駄はカジュアルですね。ドレスコードにひっかかる場合もあります。
高嶋さん
ビーチサンダルの和物版みたいな感じですかね?
川口さん
近いと思います。
高嶋さん
へえ〜面白い! 下駄を履く場合は素足が基本ですか?浴衣の時などは下駄を履きますよね。
川口さん
下駄は足袋で履いていただいても結構ですし、素足で履いていただいてもいいと思います。草履は素足だとちょっとつらいかもしれませんね。
高嶋さん
草履は、派手な会議やパーティーなど、シチュエーションによって、みなさん使い分けているんですかね?
川口さん
できれば色々揃えて頂けるとありがたいですね。 最近はみなさんお着物を着る機会があまりないので、成人式のときの1足だけという方も多いですが、代々来ていただいているお客様も多くいらっしゃいます。
高嶋さん
お客様と長年のお付き合いがあるなんて、素晴らしいことですね。跡を継がれたのはいつですか?
川口さん
店に入ったのは14~15年前です。社長に就いたのは3年前なので、2010年ですね。
高嶋さん
お父さまの代から守ってきているものはありますか?
川口さん
親父からは、“お客様のために”ということを忘れてはいけないという基本を叩きこまれました。お客様に喜んでもらえることを喜びに感じなさい、と。
高嶋さん
素敵な教えですね。
川口さん
特に銀座では、そういうことを意識しないと通用しない、ということも何度も言われましたね。確かにその通りなんです。だから、その姿勢は守っていきたいと思いながら働いています。

30歳を過ぎて、地元・銀座の魅力がわかってきました

高嶋さん
川口さんは小さい頃からずっと銀座に住んでいるんですか?
川口さん
はい。でも、小学校はちょっと離れたところに通っていたので、地元には、幼馴染や学校の友だちはいないんです。休日は家に引きこもっています(笑)。
高嶋さん
銀座生まれの方で、引きこもりとは珍しい(笑)。
川口さん
室内が好きなんですよね。跡を継ぐ前は、ゲームの制作会社に勤めていたんです。
高嶋さん
じゃあ、大人になってから銀座にご友人ができた?
川口さん
そうですね。30歳過ぎて、銀座の青年会の「銀実会」に入ってから銀座に友人ができました。それまでは、銀座は自分にとってただの地元。だから周りにすごいって言われても全然ピンとこなかったんです。それが、「銀実会」を通して、銀座の旦那衆や銀座で働くさまざまな人々と出会ったことで、銀座の魅力が最近やっとわかってきました。やっぱり“大人の町”と言われるだけあるな、と。
高嶋さん
じゃあ、この銀座の町でお店を営みながら、ご自身で新たにやりたい野望はありますか?
川口さん
実はイギリスのツイード生地など、ヨーロッパの生地を使って和風のバッグを作ったりしています。銀座は伝統と新しさを重んじる町。うちの店でも、今までのものは今までのもので残しながら、新しいものやちょっとひねりを加えたものなどの商品開発にも力を注いでいきたいですね。

次回のゲストは……?

高嶋さん
次回のゲストをご紹介いただけますか?
川口さん
明治時代から続く老舗の寿司屋「銀座寿司幸本店」の四代目主人・杉山衛さんです。

寿司を粋にいただく方法から、銀座の寿司店の歴史まで。大人なら一度は経験したい由緒ある銀座の寿司屋の魅力を感じていただけると思います。

高嶋 ちさ子

ヴァイオリニスト。6歳からヴァイオリンを始め、海外で活躍後、日本に本拠地を移し、全国各地でコンサートを行っている。現在は、演奏活動を中心としながらも、テレビやラジオ番組の出演などでそのキャラクターが評価され、活動の場はさらに広がりを見せている。

高嶋ちさ子オフィシャルウェブサイト

川口 彰久

履物と傘の老舗「銀座ぜん屋」三代目。銀座で生まれ育ち、2010年より先代の跡を継ぎ、代表取締役に就任。伝統を踏襲しながらも、流行を上手に取り入れた新しいデザインの草履や傘を販売。「銀実会」理事長も経験し、銀座の発展にひと役買っている。

「銀座ぜん屋」ウェブサイト

取材・文:高橋瑞穂  取材場所:そば所 よし田

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