GINZA CONNECTIVE (高嶋ちさ子対談シリーズ)

茂登山 長市郎×高嶋 ちさ子

GINZA CONNECTIVE VOL.5

茂登山 長市郎×高嶋 ちさ子

2012.02.01

バイオリニストの高嶋ちさ子さんと、銀座人たちの対談シリーズ。高嶋さんにとって銀座は、仕事でもプライベートでも思い入れのある街。そんな高嶋さんがゲストの方に、銀座のあれこれをディープに聞いていただきます。今回のゲストは、ヨーロッパの一流ブランドをいち早く日本に紹介した「サンモトヤマ」の代表取締役会長、茂登山長市郎さんです。

〝商人〟というのは、〝飽きさせない〟ことが大切。

高嶋さん 
話は変わりますが、茂登山さんは現在おいくつでいらっしゃいますか?
茂登山さん
昨年の11月で90歳になりました。
高嶋さん 
ええ!? 本当にお若いですね。
茂登山さん
いやいや、そんなことないよ(笑)。でも、今でも毎日お店には顔を出しているんですよ。
もちろん接客もします。
高嶋さん 
そうなのですか!?
茂登山さん
やっぱり〝商人(あきんど)〟というのは、お客さまを〝飽きさせない〟、そして自分も〝あきない〟ことが大切ですから。売り場に出て、実際にお客さまとお話することでヒントをたくさんいただきますよ。
高嶋さん 
審美眼を養うために、何か心がけていることはありますか?
茂登山さん
実はね、私は携帯電話を持っていないんです。今の人たちは、どこでも携帯電話の画面ばっかり見ているでしょう? 私はやっぱり自分の足で歩いて、自分の目で見て、街の空気を感じたいんです。ハッとするようなショーウインドウに出合うと、つい足を止めて見とれてしまうことも多いですね。
人間、大切なのは直観力、ヒラメキ。いつまでも忘れたくないですね。

銀座は〝世界の銀座〟なんです。

高嶋さん 
若い人たちが茂登山さんのような本物を見抜く力をつけるには、何が大切でしょうか?
茂登山さん
若いときから高級ブランド品を身に着ける必要はないと思います。今銀座には、ファストファッションと呼ばれるお店がたくさん出店していますよね。高級な銀座のイメージを損なうのでは、と心配される方もいらっしゃるようですが、個人的には良いことだと思っているんです。そこへ行けば全身3万円くらいでコーディネートできるでしょう? そうやって、個性が輝く着こなしをどんどん勉強して、自分自身のテイストを見つけることが大切だと思います。
でも今は違う。同じものが恰好悪いと思う時代なんです。
高嶋さん 
より個性を大事にすべきだということですね。
茂登山さん
そうです。自分のカラーを作らないとダメですね。そして同時に銀座は、ラグジュアリーなブランドも軒を並べる街です。若い人たちも気軽にウインドーショッピングできる。自然と本当にいい物を見極める力が養われると思います。こうして将来の銀座の礎を作る若者が増えていってくれればいいと思っています。
高嶋さん 
今後、銀座はどのようになっていくと思われますか?
茂登山さん
羽田空港が国際化したことで、これから銀座への観光客もどんどん増え、グローバル化が進んでいくと思います。銀座はおいしい食事や買い物ができ、ホテルもあるし、ちょっと足をのばせば劇場もある。こんなに楽しみが詰まっている街は他にはないと思います。
加えて、銀座は治安もよく、街並みも美しい。ロンドンのボンド・ストリート、パリのフォーブル・サントノーレに匹敵する、そんな街が銀座だと思います。銀座はもはや〝世界の銀座〟なんです。

次回のゲストは……?

高嶋さん 
次回のゲストをご紹介いただけますか?
茂登山さん
日本三大料亭に数えられる「新ばし・金田中」の若女将 岡副徳子さんです。大正時代から新橋の花柳界を守り続ける名店の、素敵なお話が聞けると思いますよ。

高嶋 ちさ子

ヴァイオリニスト。6歳からヴァイオリンを始め、海外で活躍後、日本に本拠地を移し、全国各地でコンサートを行っている。現在は、演奏活動を中心としながらも、テレビやラジオ番組の出演などでそのキャラクターが評価され、活動の場はさらに広がりを見せている。

高嶋ちさ子オフィシャルウェブサイト

茂登山 長市郎

株式会社サンモトヤマ代表取締役会長。1921年生まれ。日本に初めてグッチやエルメスなどの一流ブランドを紹介し、ファッションブランドビジネスの立役者として内外に知られた存在である。
著書に「江戸っ子長さんの舶来屋一代記」(集英社刊)が発売中。

「サンモトヤマ」ウェブサイト

取材・文: 岡井美絹子 取材場所:サンモトヤマ 銀座本店

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